「バードストライクリスク対策試験」を実施し、 垂直軸型マグナス式風力発電機のワシの視認性、安全性を確認
~環境省釧路自然環境事務所 ・猛禽類医学研究所などと報告会を開催~
2024年3月26日
株式会社チャレナジー(本社:東京都墨田区、代表取締役:清水敦史、以下 当社)は、鳥が風車に衝突するバードストライクのリスクを低減する新たな取り組みとして、 JAC環境動物保護財団の助成を受けた株式会社猛禽類医学研究所が環境省釧路自然環境事務所との協定に基づき行った「オジロワシ・オオワシの終生飼養個体を活用した垂直軸型マグナス式風力発電機への反応試験」へ協力参加しました。また、2024年3月19日にその報告会を開催し、垂直軸型マグナス式風力発電機(以下 本風力発電機)のオジロワシ・オオワシの視認性が確認され、 試験期間中の接触ゼロという結果を報告いたしました。
■試験実施の背景
環境省が2022年に公表した『海ワシ類の風力発電施設バードストライク防止策の検討・実施手引き(改定版)』によれば、海ワシ類に関しては、2003年度から2021年度までの19年間に風力発電施設による73件のバードストライクが報告されています。また、猛禽類医学研究所の調査によると、北海道においては、2004年から現在(2024年3月時点)までの間にオジロワシ、オオワシで約80件以上の風車衝突事故バードストライクが記録されています。これらの事例から、風力発電が生態系に及ぼす影響は明白であり、今後の普及に際しては、猛禽類の安全性を確保するための技術革新を進める必要があります。このため、今回、JAC環境動物保護財団の助成を受けた猛禽類医学研究所が環境省釧路自然環境事務所との協定に基づき、環境省釧路湿原野生生物保護センターに収容されているオジロワシやオオワシなどの終生飼養個体を活用してバードストライクが生じにくい構造の風力発電施設の開発・実証を目的とした試験を実施することとなり、当社も本風力発電機模型の作製など試験への協力を行いました。
■試験概要・結果について
本試験は、本風力発電機に対するオジロワシ・オオワシの反応を観察・解析することで、バードストライク軽減効果の検証及び改良に寄与することを目的として実施いたしました。実際の1/8にスケールダウンした模型試験機を環境省釧路湿原野生生物保護センターの展示ケージ内に設置し、オジロワシ・オオワシの終生飼養個体が、本風力発電機を視認・忌避する条件・環境の把握を当面の目標とし、2024年3月19日に試験結果を発表いたしました。
※設置に際しては、ワシが負傷しないよう十分な安全対策を施しております。
まずはオジロワシ・オオワシが馴化するために33日間(2023年10月16日~11月7日)は稼働させずに配置する試験を実施いたしました。馴化終了後、稼働を開始して27日間(2023年11月8日~12月5日の10時~16時)観察した結果、ワシの危険行動・異常行動は確認されておりません。また総観察時間中、ワシが本風力発電機に接近(離隔距離3m以内)したのは約1.7%でした。また、本風力発電機を視認しても落ち着いた行動が記録できました。なお、試験期間内の本風力発電機へのとまり・接触は確認されませんでした。
実験の確認のポイント |
・オジロワシ・オオワシの風車の認識 |
・危険な行動や異常行動を風車に対して行わないか |
・風車に対して忌避行動を起こすか |
・過度なストレスを風車に与えられていないか |
実験の役割分担について | 企業名 |
総括・試験実施者 | 猛禽類医学研究所 |
垂直軸型マグナス式風力発電機模型の作製・設置 | チャレナジー |
試験の結果解析・とりまとめ | パシフィックコンサルタンツ |
施設の利用許可 | 環境省釧路自然環境事務所 |
助成 | JAC環境動物保護財団 |
■今後の予定
今回の報告は観察記録の一次整理段階で、さらに詳細に録画映像を分析し、ストレス反応等の有無を確認する予定です。また今回は風力発電による事故が多いオジロワシを用いて、室内の反応試験を行いましたが、今後はよりフィールドに近い条件を考慮した実験計画を検討中です。
■垂直軸型マグナス式風力発電機について
垂直軸型マグナス式風力発電機は、当社が開発したプロペラのない、垂直軸型の円筒翼を回転させることで発生するマグナス力(物体を回転させた際に風向きに対して垂直方向に働く力)を活用して発電する風力発電機です。プロペラがなく、回転速度が緩やかであり、オジロワシ・オオワシのバードストライクの軽減・防止効果が期待されております。
【特徴】
・プロペラ風車よりも風車の面積が大きいため鳥から視認しやすい
・プロペラ風車に比べ回転数が1/10程度と低回転なので、モーションスミアを起こしにくい
・プロペラ風車のような上下方向の回転の動きがないので、鳥の死角に入りにくい
■株式会社チャレナジー 会社概要
2011年の福島の原発事故をきっかけに日本のエネルギー問題に着目し、世界的にも気象環境の厳しい日本に適した風力発電を普及させるべく、次世代の風力発電機の開発を行っています。チャレナジーは”風力発電にイノベーションを起こし、全人類に安心安全なエネルギーを供給する”をミッションに掲げ、事業に取り組んでいます。